こんにちは。清新ハウス田中です。
秋葉区にて行っていた和風木塀の造り替え工事ですが、最終的に木部表面をバーナーにて焼く事となりました。
杉板の表面を焼く加工について知らない方もいらっしゃると思いますので、今日はこの内容について書いていきます。
まず「焼杉」とは、読んで字のごとし杉板を焼いて表面を炭化させた板のことです。
杉板の表面を焼いて意識的に炭化した層を作ることで格段に耐久性が向上します。
また、デザイン的にも落ち着いた感じになるため、好んで使われています。
昔、「焼杉」は、大工などの職人が知る杉板の加工方法の一つでした。
職人の世界の「知恵」は、あまり知られていないローカルな情報も多く、この焼杉についても西日本では一般的に行われていたようですが、東日本に広まったのはそんなに昔の事ではないみたいです。
もともと杉材は、枝打ち等の管理をしっかりすれば比較的まっすぐに育つため、建築材料としては非常に使い勝手の良い樹木として知られていました。
ただし、耐久性に関しては、心材である「赤身」の部分はまだ良いのですが、辺材部である「白太」の部分は非常に柔らかくやや劣ります。
そのため外壁に使用すると年輪の部分がやせて目が彫れる状態になり耐久性に問題があったのです。
現在であれば、色々な機能性を有する塗料もありますから杉板を外壁に使用することも難しくありません。
ですから、焼杉は昔からある知恵の一つになります。
焼杉の作り方には大きく分けて2つあります。
「バーナー焼き」と「三角焼き」です。
焼杉の一番の目的は板の耐久性の向上です。
なので板の芯のほうまで炭化するほど焼いてしまいボロボロになったのでは意味はありません。
手軽に焼杉板を作ることができるのがこの「バーナー焼き」という方法。
ただし、外壁に使うような板を焼杉板にする場合、カセットコンロ用のガスを使うバーナーでは時間がかかりすぎて上手くいかないでしょう。
焼杉板を製品として作っているような木材加工場などでは専用の大型バーナーがあり、効率よく大量に焼杉板を作ることができます。
表面だけサッと焼いて意匠性の高い焦げ面を作るには、焼き具合の調節が簡単なのでバーナー焼きが適しています。
「三角焼き」とは、主に西日本で昔から焼杉板を作る方法として行われてきた手法です。
3枚の板を用意し三角柱を作る要領でその3枚の板を筒状に合わせ火をつけます。
そのまま横にしていたのでは火はすぐに消えてしまうのですが、着火直後に火種側を下にして垂直に立てると煙突効果も働いて杉板が勢いよく燃えてきます。
燃えているのは筒状にした内側ですから、燃え具合(板表面の炭化の進行具合)を確認することは難しく、どのタイミングで消化するのか経験と勘が必要です。
バーナー焼きのように炎であぶるのではなく杉板が自ら燃えているので、炭化層も厚くすることができます。
表面を炭化する焼杉板のメリットは、やはり炭化層が効果を発揮する耐久性にあります。
「炭」が腐ったりするという話は聞いたことがないと思います。
焼かない普通の杉板を外壁などの風雨にさらされる箇所に使用した場合、雨にぬれたり乾いたりを繰り返すうちに木目の柔らかい部分からやせていったり、腐朽菌などの作用で木材そのものが腐ったりします。
炭化した状態であれば、菌類が繁殖するために必要な栄養分などがないため腐朽菌などの繁殖も抑えられ外壁に使用した場合も耐久性が高いと言えます。
このように板を焼く事には主に耐久性の意味があります。
和モダンの要素にも組み込めるような意匠性もあります。
こういった技術、知識を生かしながら皆様の住まいづくりに貢献できるようにがんばっていきます!